中長期計画・概要

*中西代表理事が活動していた2017.6月までを第1期とし、世界の急激な環境変化に迅速に対応するため、品質の高いシンクタンクを目指すことを目標とし第2期「国家ビジョン研究会2.0」と命名する。

中長期計画としての戦略目標を以下の5項目とする。
(Ⅰ)日本文明論の確立。宗教、国柄、人種、文化等を超える、世界の規範となる真に価値ある哲学(思想)として日本文明論の基層にある哲学を体系化し、世界に訴えていくアクションプランを確立し展開する。
(Ⅱ)デフレスパイラルからの脱出と日本経済の復活再生。質・量とも強い日本経済の復活再生、経済大国のみならず、福祉幸福大国および環境大国を実現する方向感を探る。
(Ⅲ)国家の安全保障とライフラインの強化。国家安全保障と自前のエネルギー確保・食料の安全保障を強固なものとする。
(Ⅳ)教育の抜本改革と新教育理念を構築し、世界のトップを走る知性国家を実現する。
(Ⅴ)ポリティカルガバナンスの改革と政治、官僚制度の改革を実現する。

(詳細説明)
(Ⅰ)日本文明論の確立
  人類70億人は今、倫理が混乱している。世界は新しく出直しをする
時期が来ている。それは社会主義でも共産主義でもアメリカ主義でもない。ワールドガバナンスの救いは日本文明の中にあると考える。
日本文明の基層に潜む「哲学」を抉り出し、それを理論的に解明・体系化して、ワールドガバナンスの理念(人類哲学・地球倫理)として世界に発信することである。その理由は、世界は今後ますます政治的・軍事的・思想的に混迷の時代に入っていき、最悪は第3次世界大戦(核戦争)も感じさせる事態が起こっている。人類滅亡の危機を回避するためには、最早一極突出した軍事力をもった国の力による制御も、今まで世界を思想的に一つにまとめてきた西欧キリスト教文明による制圧も、共に弱体化に向かっていることはアメリカ経済の衰退と中東動乱の底流を見れば明らかである。更に覇権主義の台頭、行き過ぎのポピュリズム旋風による価値観の相克がある。
これらの世界の潮流に対して、世界平和をもたらしてくれるワール ドガバナンスたりえる文明は、「日本文明」である所以を明らかにしていこうとするところに日本文明論確立の意図があった。
その手法は、“証拠を明らかにして初めて真理とする”姿勢をもつ現代自然科学や生命科学等の先端科学の知見を踏まえた「学際的研究」によって明らかにしていこうとするものである。その研究成果として「日本文明論」としてまとめつつある。
日本人の中核を占める機軸を確認するためのアクションプランを作成し、その後は、普遍的価値について、その趣旨を広く国民と世界に訴えていく。具体的には、市民国際連合構想(現在の自国優先の集合体の国際連合は限界であり市民により世界の課題を解決できる体制)、世界知識人会議(世界の知識人による日本文明哲学の議論)、マスコミSNS対策(簡潔な行動原理要約版を作成するなどして世界に訴える)、等である。

(Ⅱ)日本経済の復活再生
  ① デフレスパイラルからの脱出策
日本文明のもつ哲学・思想が世界のワールドガバナンスたり得るものとして世界の人々を納得させる説得力は、理論体系のもつ正しさ・真理性・客観性と共に、「事実」のもつ説得力が必要不可欠である。
すなわち、日本が日本人のもつアイデンティティーにより、経済的・物質的にも豊かな国となり、かつ貧富の格差の少ない平等で、争いの少ない国、そして助け合いの精神の豊かな安心して生きられる素晴らしい文化をもつ国であることを、事実として世界に立証して見せなければならない。
したがって、なすべきことの第一は、今や世界の三流国に向かって衰退しつつある現状から一刻も早く脱却しなければならない。
我が国の今なすことの出来るアクションプログラムは、長期にわたるデフレスパイラルから脱出するための金融・財政の両面による強力な対策である。
日本国内(ローカル経済圏)はデフレから脱却したあとは、高い潜在成長率は見込めないことから定常的な経済(高度成長を目指すのでなく、低成長であるが技術革新により質・内容を高める豊かな経済)を研究していく。

  ② 日本経済の復活再生
世界の市場は発展途上国等の参入等により、市場の奪い合いが進み、 従来型の市場は限界に近づいていることに伴い、資本主義は限界に近付いている。
今後は既存の発想にとらわれず、イノベーションによる産業戦略や 航空宇宙、AI、生命科学、応用化学、ナノテクノロジー、海洋開発、世界標準戦略 等の先端領域で成長戦略を構築し、日本がヘゲモニーをとることが重要である。
またグローバル経済の発展により、公正な競争に裏付けられた資本主義に、強大な力で押し込んでくる、グローバル企業や国有企業が世界を席巻して、もはやこれまでの商売のやり方(良いものを安く)だけでは対抗できない。
グローバル経済圏とローカル経済圏を想定した、新しい企業体系の構築が必須である。即ち、グローバル企業や国有企業に対抗できる、資本・税制・規制緩和を国家が後押しして世界で正当に戦える企業、組織を育成する。

③成長のための財源の確保
日本は経済の停滞により税収がのびず、また膨大な国債の債務が足 かせとなり、予算も実質投資分野へ資金が回らない。
国債の債務圧縮には、日銀保有の国債との実質的な相殺処理や永久 国債等の研究は急がなければならない。債務圧縮により国債利払いはなくなり、投資へ回す資金が確保できるからである。
同時に、現在日本の眠っている資金のなかで個人金融資産を活用す ることが最適と考える。逆にこれ以外はないと考える。富裕層の資金を活用する(個人金融資産1800兆円の一部100兆円程度)スキームを考えれば、その膨大な資金でソブリンウエルスファンド的なものを確保できる。その財源で、国家プロジェクトを戦略的に投資していく仕組みを創る。
その運用については、政官の縛りをなくす、自由度の高い新機構を創設し、将来を見通した高度な専門技術者を有する目利きシステムに裏付けられた破壊型イノベーションの創出とその第三者事業評価をいれる。これまでにない戦略的な投資により、新たな産業革命を起こす。

(Ⅲ)国家の安全保障とライフラインの強化
 ①国家の安全保障問題
  世界は混沌とした時代に突入した。200年続く欧米支配の潮目が明確に変わり、トルコ、ロシア、中国といった欧米支配以前の世界帝国が、影響力を強めようとしているようにも見える。
サウジとイランの国交断絶、シーア派とスンニ派対立、トランプの イスラエル承認 パキスタンの核売買、北朝鮮の核保有・大陸間弾道ミサイル保有等世界は混乱の中にある。日本はどう対応すべきかを早期かつ真剣に検討しなければならない。
必然的に憲法改正への取り組みや偏向マスコミの報道を排除し真の議論を世に問うことは不可欠であると共に、防衛力・外交力(ロビー活動を含む)を見直し、将来の日本の立ち位置を明確化すべきである。

②エネルギー安全保障問題
国家のライフラインは基本的に二つあると言える。一つはエネルギ ー、他の一つは食糧自給率の問題である。
まずエネルギー問題から入る。結論を先取りして言えば、今まで無資源国と位置づけてきた国家の基本スタンスを「資源立国」へと大きく舵を切るべき時である。代替エネルギー源としては自然再生エネルギーである太陽光や風力、地熱等のベストミックスが言われるが、安定性・コスト・供給量等を思慮すると、現実的には天然ガスの時代に入っていくこととなる。
しかしながら、中東動乱等で高騰する鉱物資源の輸入には、莫大な 資金が必要であり、原発の漸減と共に増え続けることとなる。
ここで国家の基本スタンスを無資源国=加工貿易立国から 「資源立国」へと変革すべしとの主張が重要な意味をもってくることになる。かつて英国をその財政危機と共に国家の没落から救ったのはサッチャーの決断によるところの国策としての北海油田開発であった。今の 日本は上述のごとく当時の英国と同じ厳しい局面にある。日本版北海油田開発プロジェクトの発進が望まれるところである。
今から十数年前、資源エネルギー庁の行った試掘で我が国の経済水域の海底に、膨大な天然ガスの一種である「メタンハイドレート」が眠っていることが確認された。推定埋蔵量は我国年間使用天然ガスの100年分にもあたると正式に発表されたのである。当研究会は十数年にわたりメタンハイドレート開発活動を推進してきた。
メタンハイドレート開発をスピードアップし、早々に技術開発の予算を大幅に増額しクリアして、商業ベースにのせる事である。この道筋こそ国家を財政破綻から救い、また同時にライフラインであるエネルギー安全保障の問題解決にも通ずる道である。
   メタンハイドレート開発は海洋資源の確保にも強力に応用できる。
また、熔融塩炉原子力発電(第四世代原子炉の本命。放射性廃棄物発生が非常に少なく、プルトニウムも発生しない。且つ使用済核燃料の最終処理がしやすい。小型化可能で耐震性や暴走の危険もない。)や水素エネルギー(地球上で普遍的かつ豊富に存在する水素を燃料としたエネルギー。人類究極のエネルギーといわれる。燃焼させても水が生成するのみで,きわめてクリーンな燃料でCO2削減にもなる。)については、人工光合成と光触媒技術は世界トップレベルにあり人工光合成によるソーラー水素(H2)製造の実用化が視野に入ろうとしている。これら多方面での新エネルギー確保の途も研究探索していく。

  ③食料問題
国家のライフラインの今一つは食料問題である。我国の食糧自給率は、試算方式の違いによって諸説あるが、低い数値であることは認めざるを得ないところである。即ち、日本の食料は海外の食料に頼らねば成り立たないということである。農業・水産業は共に、就労者の高齢化と後継者不足に悩まされ、耕作放棄地の増加でますます衰退に向かっている。更に、例を挙げれば、米は農家の7割が作っているが農業全体では2割という非効率化という課題がある。農業の六次産業化の必要性が言われる所以である。自給率を高めるためには抜本的な農業再生に向けた構造的な農政の改革が不可欠である。
以上、農業・水産業・林業の近代製造業化はグローバルの競争の中で不可避のことであるが、食の安全保障の観点から一定の食料自給率確保の方策を考えておかねばならない。

(Ⅳ)教育の抜本改革と新教育理念
“教育を誤れば国は滅びに至る”と言われている。教育問題は国家の中長期にわたる最も重要な課題である。太平洋戦後、アメリカ占領軍によって作られた「教育基本法」は、アメリカ文化の理念に立ったものであり、その精神によって教育され、育ち成長した子供たちが60歳台となり、日本国民は今や三世代にわたってアメリカ文化の洗礼を受けた人間となっている。日本国民は日本国民にして日本人ではない姿になりつつあると言えよう。
アメリカ占領軍の占領政策の一環として作られた、内なる憲法とも言われる「教育基本法」は、戦前の軍国主義国家のもっていた全体主義の復活を恐れ、その内容は徹底して「個人の権利」、「個人の自由」、「個人の尊厳」を唱え上げ、個人の全体社会への貢献の重要さ等は唱えられていないに等しい文言の羅列である。ここから生まれてくるものは、個人主義は容易に利己主義へと変身する。日本文明のもつ助け合いの利他の精神は希薄となり、今や日本国は自分本位の寒々しい社会に変容しつつあると言える。
急ぐべきは、このアメリカの精神文化に立った「教育基本法」を部分的な修正ではなく、根本から抜本的に作り変えるべきである、ということである。繰り返して言えば、アメリカ文化の理念を根本に据えたものではなく、日本文明のもつ理念を大骨として根本に据えたものを新しく創りあげることである。幸いにして、国家ビジョン研究会では、日本文明論の確立を急いでいる。当然ながら皇室の後継問題も避けて通れない課題である。この研究論文の成果を踏まえ日本文明のエッセンスを取り出し、その理念・精神を子供達に分かり易く教えるカリキュラムを作る作業に、教育分科会を中心として挑戦していく計画である。
並行して科学技術分野における世界の知のトップを走る水準の確保である。今や世界大学ランキングでも論文数ランキングでも世界における日本の地位の低下傾向は否めない。ポストドクター問題、博士課程進学者の減少、国家研究機関・企業等研究開発予算の減少など、基礎研究の衰退や革新性のある研究は国家の将来に係る重大な課題であり、世界トップの水準を復活させる課題は多々あり、大胆な改革を提言する。
更に「科学技術基本法」を見直し「新科学技術基本法」を制定し、特に大学・大学院・公的研究機関の研究レベルアップと手厚い研究者育成及び雇用政策を図る。先進国の中で後れを取っているGDP比の教育資金をアップさせる。即ちイノベーションをベースとした長期研究開発機構の民間主導による制度を政策提言として取り纏め中である。

(Ⅴ)ポリティカルガバナンスの改革
国家の統治システムである「政治」の改革である。大別して二つある。一つは「官僚内閣制」と批判されてきた官僚主導による行政の仕組みを、「議院内閣制」の字義通りの国会議員である政治家が主導して行政を名実共に仕切ることであり、そのためには政治家を補佐する強力な頭脳集団である民間のシンクタンクの存在が不可欠となる。我が国家ビジョン研究会の大きな役割の一つである。
次に立法府である国会の在り方についての問題が存在する。今論じられている一票の格差の是正や、小選挙区か中選挙区かといった議論ではなく、より根源的な民主主義の根幹に関わる選挙制度そのものへの批判と改革の提言である。ずばり言えば、現在の民主主義の根幹である国民投票による選挙制度は、かつて2000年前アテネでプラトンが予言した如く「衆愚政冶」に堕し、多くの弊害が生まれつつある現実がアメリカにも日本にも今や色濃く現れている。更に言えば、日本には潜在的に一流の人材がいるが、政治の表面に出てこられないという欠陥がある。有為な人材が選挙に勝てないシステムを見直しすべきと考える。
したがって国会制度は、衆議院は民主主義の本来の本義である現状の国民一人ひとりの権利と意志を尊重する投票制度であるべきだが、参議院は全く性質を異にするものに抜本改革すべきである。
現在の如き選挙区が、全国版であるだけのものでは存在意義がなく、知名度の高いだけの、政治家には縁遠い人物が(民主主義の多数決の原則に促され数の上で必要とされて)登場してくることとなっている。この課題への解は1000年余にわたって栄えたローマ帝国の元老院、また非公選性、無給のイギリスの貴族院などに範を求めるべきであると我々は考える。
簡潔に言えば大衆に媚を売る必要のない、得票による選出ではなく学界や産業界あるいは芸術・芸能の世界であっても、一流の人物をそれぞれのエリアから推薦させ、しかるべき審議会で審議し天皇の名において任命する形である。そして社会の原単位である一家の成立と運営が男(父)と女(母)の異質の二極の談じ合いによって行われている如く、異質の二院が談じ合い、話し合って(国民の耳目にオープンにした形で)国政の決をきめるべきであろう。さすれば、ねじれもにらみ合いも無駄な時間も人員も大幅に縮小されるであろう。
このポリティカルガバナンスの改革は、政治力学上も大きな利害得失の伴うものであり、実現には多くの困難と高いハードルが予想されるが、同時に多くの病理現象を生み、賢明な国民の目からも改革の必要性の声も上がっていることから、我々はその先頭に立ってこの課題に挑戦していこうと決意している。

【結び】
以上述べてきた五つの戦略目標に向かって我が国家ビジョン研究会は、中・長期的に取り組んでいくこととなる。いずれの目標、課題も多くの困難と障害が予想されるが、我々は臆せず勇気をもって挑戦していく覚悟である。
今ここで確認すべき避けて通れない重要なポイントは、日本人の生き方が、根本から問い直しを迫られている状況があるということである。即ち、戦後的な国家観を楽観的に受け入れる者と、しっくりこない違和感(誇りと大義が失われていることや非合理に生きなければならないこと等)を感じる者との鬩ぎあいが、連綿と続き、長く沈潜しているということである。某文明研究家によれば、日本は父性主導型の明治維新、母性主導型の戦後改革、それに匹敵する百年に一度の大転換期に当たり、母性型パラダイムの衰亡期に差し掛かっているそうである。時代のうねりを見誤ることなく、本質的な解決策の先送りや、時間をかけ過ぎることは、日本文明の命運に重大な危機をもたらす時に来ているということである。即ち、日本のアイデンティティの共感を早期に統一しないならば、国家の全ての課題解決も、国家の行動施策もいつまでも停滞せざるを得ない。この危機をどこまで深く精神の危機として捉えるかにかかっているともいえる。幸い、我々への強力な味方は、時代の流れであり、時代は今、人類社会数百年、否数千年に一度の大きな変革を求めている「時旬」である。