【会長略歴・挨拶】

会長 加瀬 英明
昭和11年12月22日 東京生まれ。慶應義塾大学経済学部、エール大学、コロンビア大学卒。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長((株)TBSブリタニカ、昭和42~45年)を経て、福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣で首相特別顧問として対米折衝。

【役職】
美しい日本の憲法を創る東京都民の会共同代表(下村博文、長谷川三千子、加瀬英明)/公益社団法人隊友会理事/東京国際大学特任教授/日本会議代表委員・東京都本部会長/(財)石橋財団評議員/(財)など

【著作】
『天皇家の戦い』(新潮社)『イスラムの読み方 なぜ、欧米・日本と折りあえないのか』(山本七平 祥伝社 )『徹底解明!ここまで違う日本と中国 中華思想の誤解が日本を亡ぼす』(石平 自由社 )『中国はなぜ尖閣を取りに来るのか』(藤岡信勝共編 自由社)『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』(ヘンリー・スコット・ストークス 祥伝社 )など

会長挨拶

この度、国家ビジョン研究会の会長を拝命し一言ご挨拶申し上げます。
アメリカ文明の「個人至上主義」「自由競争主義」「経済第一主義」がグローバリズムの名のもとに多くの弊害を生み出している。とりわけ伝統的な社会を破壊するかたわら、所得の格差を増大してきた。伝統社会が分解して破壊されていくのにともなって、人と人の絆が弱められてきた。グローバリズムという魔物が伝統社会を粉々に噛み砕いて、“孤”という粉末に変えてきたのだ。この本質は、例えばトランプがアメリカ社会を分断したような報道をみても逆だ。即ち、アメリカが分断されるようになっていたから、トランプ現象といわれるトランプ大統領が出現したのである。つまり世界全体が、既存の政治や権力等による統治秩序の限界が露呈し熔解の過程に入っているということである。多くの識者がトランプ現象やヨーロッパをはじめとする諸国で「ポピュリズム」による政権が誕生しているとしているがこれも事実はまったく違う。ポピュリズムとは一部の政治家が大衆を煽る現象を言うが、大衆が既存の政治のあり方に強い不満を抱いて、あり方を変えようという気運が澎湃として起こっているのであり、扇動されたものではない。時代が曲がり角に来ているのである。
このような世界の動きの中で、中国は自国を中心に置き周辺国は一段下に見る所謂「華夷秩序」の構築を目論み世界の覇権を取ることを隠さず、世界を蚕食しつつある。また、中東は中世イスラム帝国、ロシアはユーラシア連合、ロシア帝国、トルコはオスマン帝国、イランはペルシア帝国、等かつての帝国復活に向け勢力の扶植を図っている。アメリカはアメリカンファーストで世界に抗する策にでている。これらの多くは「自分さえよければいい」「欲しければ奪い取ればいい」「盗まれる方が悪い」といった遺伝子が大勢を占めている国も多いように思われる。このことは西洋や中華等の文明の思想哲学が多くの軋轢や紛争を生み出し、累卵の危き情勢を生み出しているにも関わらず、これらの矛盾撞着に気づくことなく何ら解決策を見出し得ないということである。
一方、縄文時代から連綿と受け継がれた日本人の遺伝子は文明史論の中でも独自の日本文明を生み出し異彩を放っている。日本人は「他人が嫌がることをやらない」「欲しければ働く」「盗むことはよくない」といった気風が遺伝子に組み込まれている。日本人のアイデンティティとは自然の摂理に合わせる心、他者と和の為に先ず譲る心、相手を救ける心、全体のために自らを捧げる心、一言でいえば「和の心」を大切にしてきた。今、世界は大きな文明哲学の見直し再構築の時代に突入している。日本人の基層に流れる人間観、自然観、神道等の日本文明哲学が今ほど世界に求められている時代はない。
国家ビジョン研究会は、日本文明哲学をベースに“志”のある一流の学者や人材が集まり、時代の潮流を見極め、先見的な「国家の方向感(ビジョン)」を樹立し、もって「新しい国家像」を引き出す木鐸の集団である。それを支えるスタッフも基本的にボランティア有志の草莽の人々である。“世界に範たる国をつくる”不偏不党の市井シンクタンクとして数々の政策提言に取り組みたいと考えている。
平成30年12月