【日本文明のダイナミズム】 ニッポン人の心を取り戻そう!  

 2021.2.24  
 (一社)国家ビジョン研究会 常務理事 / 日本文明文化研究家 飯田 汎

 日本の自然環境は日本人に固有のDNAを身に付けさせ、そうした基盤の上に日本文明が花開きました。
  今、世界は激動の最中にあり、その影響が日本にも押し寄せ、さまざまな分野において、対応を迫られています。
 戦後の平和な時代に慣れ過ぎた私たちには、平成の始めの1990年代になって、世界の大きな変化を感じながら、どう変化すべきか政治改革や構造改革に迷いながら過ごす間に、末期症状ばかりが目立つ30年を過ごしてしまいました。これほど長期間に亘って停滞の中で過ごした時期は近現代史上まれにみる程です。
 
◆日本文明のダイナミズムの提唱
 内憂外患を抱え込む日本の覚悟
私たちは今、日本文明の転換期という重要な転機にあると思わざるを得ません。こうした時期に、突然降りかかってきた新型コロナウィルス・パンデミックと闘う日々を通して、多くの人たちは、何か大変な時期に遭遇したことに漸く気が付いたといえます。
 図1に、“永遠の日本 令和新時代への覚悟”とし、日本の歴史観・国家観を考えるための一つの私案を描いてみました。
(図案の導出については、本紙末尾に紹介の拙著を参照ください)
 日本列島に棲むご先祖は、自然の摂理に従って歴史の営みを続けるうちに、 螺旋的な発展観に従った実に美しい営みを遂げて今日まで過ごして来られました。
 これを〔日本文明のダイナミズム(仮説)〕と名付けました。
 この仮説に従えば、激しさと穏やかさが入り混じった自然環境に従い、一万年余りの期間に培った自然の摂理ともいえる縄文地下水脈の上に日本列島は築かれました。日本人の魂の営む歴史の骨格は、火と水の二元相補で歩む時代の交互転換のダイナミズムを促す、権威を帯びる天皇の存在が不可欠です。安定した皇嗣継承の課題を先送りしては国家の土台が盤石になりません。
 私たちは、これまでの平和で穏やかな時代(静穏・水の心の時代)が終わり、今は既に、自立的で、激しく、荒々しい時代(激動・火の心の時代)への誘導期に突入したと考えざるをえません。私たちはいま、とてつもなく難儀な時代に踏み込んでいるという自覚が必要なのです。
 すなわち古代社会から歴史上6回目の大転換期にあることを認識しなければなりません。この大転換の時代にあって必要な心の準備を怠りなく為すには、まずは、剛健な、自立的な振舞いのために4C「勇気」(courage)・「挑戦」(challenge)・「創造」(creation)・「協同」(cooperative)が何より必要です。
 現下の日本は、国内には四半世紀も続く長期のデフレ経済やつるべ落としの人口減少、外を見れば予断を許さぬ中国の現状変更への企み(尖閣諸島奪取への着実な動き)への対峙と、まさに内憂外患の中にあります。
 こうした中で、突如、新型コロナウィルス・パンデミックに襲われました。恐らくこれも自然の摂理のなせる警鐘なのでしょう。ここで、日本人すべてが心の変容に取り組まなければなりません。

“永遠の日本 令和新時代への覚悟”
〔日本の歴史観・国家観を語ろう〕

   図1.日本文明のダイナミズム仮説

◆眼前の課題にどう立ち向かうか
 いま、人びとの為すべきことは何か
 私たちは、平成時代に入った90年代に、顕著に心の劣化を感じてきたことを認めざるを得ません。心の劣化は、次第に日本人のアイデンティティの喪失に繋がってしまいました。しかし今、漸くそのことに気付き、再びその本来の日本のあるべき姿を取り戻そうとしています。
 そして、突然現れたコロナ禍は、日本人の心の転換に迫っているのです。さきの4Cとともに、清潔、几帳面、責任、真面目、誠実、真剣など日本人が昔から大切にしてきた心性「+Jマインド」を取り戻さなければ、突然、まさかと思われる生活に陥るだろうことは誰にでも容易に理解できます。
 その一方で、平成時代に身に付けた“敗北主義、贖罪意識、事なかれ主義、無気力、甘え、卑屈、無責任、自己中心など”といった負の心性「-Jマインド」を遠ざけなければならないことは自明なことといえます。
 私達は今、それぞれの心の中に眠っている正の心「+Jマインド」の遺伝子をスイッチONし、日常生活のうえで作動している負の心「-Jマインド」の遺伝子をスイッチOFFにするのです。正の心へのスイッチの切り替えには国民の意志と共に環境変化が必要です。日々、石鹸で手を洗い、3密を避け、マスクをして責任ある行動をとらねばならないからです。現下のコロナ禍は日本人の心の転換〔Jマインド転換〕をなす絶好の機会なのです。自虐教育を排し、日本人の心の通った道徳教育を復活させることが良いと思います。
 戦前・戦後の5回目の大転換について、目を凝らして熟考し、あの戦争の何が過ちで、何が正義だったのか、敗戦の理由は何かを総括し、自虐史観を排して、戦後レジームからの脱却をして欲しいと思います。             
 今は、日本人が正気に立ち還り、一人一人が時代の転換を誘導する先導者としての振舞いを担う覚悟を決める時なのです。
 令和新時代は火の心で営む新しい知識に衣替えをして臨む清新な時代なのです。思考停止でややもすれば軽薄に過ぎた心から重厚な精神を取り戻す転機です。
① <長期のデフレ経済>からの脱却
何故、日本だけが成長しないのか、経済学的な理論構築を見直す時機です。
② <つるべ落としの人口減少>への取り組み
 真の少子化の要因から逃げず、社会文化を変える時機です。
③ <日本の自立>中国による尖閣諸島奪取による現状変更の企てへの対処
 中国の本性を知り、こうした危機回避に力を結集しましょう。
 どれも日本の生存上の重大な課題です。いずれに対しても火の心の時代に相応しい覚悟と共に真剣な議論をし、速やかに行動を起こすべきと考えます。  
                          
【参 考】
1)飯田 汎『激動の世界に対処する 思考の転換5つの鍵』勉誠出版(2020)
2)飯田 汎:日本文明論の探究 「倒錯した観念」に誤導される日本の岐路
      文理シナジー、24(1)2020,4