【新時代のキーワードは「リサイクル」と「シェアリング」】   

2019.5.3

副幹事 / (株)ITS NETWORK 代表取締役社長 福山 忠彦

世の中が大きく変わろうとしています。慣れ親しんできた「年功序列」「定年制度」「ピラミッド型組織」「大量生産・大量消費」はもうすでに過去の遺物です。

資源は有限、地球を大切に、これに気づいた私達
多くの人が地球の未来を危惧する時代になりました。250年ほど前、ジェームス・ワットの蒸気機関で産業革命が起こり、それが資本主義の誕生へとつながり大量生産、大量消費という豊かで快適な社会が形成されました。しかし、資源は有限です。このまま成長することは出来ません。そのため、国連は2015年にSDGs(持続可能な開発目標)を作りました。課題を17の領域に分けて2030年までに世の中を住みよい所にする活動です。一番目は「貧困をなくそう」活動です。現在一日1.25ドル未満で生活する極度の貧困層を無くす活動です。七番目は「エネルギーを皆に、そしてクリーンに」を掲げ、再生エネルギー割合の増加促進を勧めています。十二番目の「つくる責任、つかう責任」は天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を促す活動です。その中には一人当たりの食品廃棄物の半減もあります。最後の十七番目は「パートナーシップで目標を達成しよう」とすべての国の連携を訴えています。この17項目の活動がSDGsです。この活動は日本でも認知度がかなり上がって来ました。

地球温暖化に歯止めをかける運動の盛り上がり
地球の気温はこの100年で0.6度、日本は1.0度上昇しています。このため1988年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が国連環境計画と世界気象機関によって発足しました。我々を取り巻く温暖化は決定的に明確であり、それは人類の活動が直接的に関与しているという信念のもとにIPCCは活動しています。2015年末のパリ協定で日本は2030年までに2013年比で温室効果ガス排出量を26%削減する目標が決まりました。

この様な世界的規模の動きと同時に見過ごしてはならないのは私たちの身の回りの変化です。注目したい社会の変化は次のようなものです。

キャシュレス時代が到来します
来年のオリンピック時には急速にキャシュレス化が進んでいることでしょう。既にスウェーデンでは現金自動出入機が撤去され現金流通量の割合はわずか1%です。また、現在のお金は国の中央銀行が発行したものであり、国の保証がありますが、更に進んでそのような保証のない仮想通貨が徐々に市民権を得ようとしています。

・もうすぐ町の一等地から銀行が消滅します
都市銀行は今や僅かに4つ。コンビニや自宅のネットが取引媒体になります。若者はすでにコンビニか自宅のネットで預金状況を確認しています。企業も自己資金を沢山保有するようになり、必要資金は銀行だけでなく色々な方法で調達をするようになりました。銀行を経由しないクラウドファンディングも増えました。銀行が街の中心地から消えると街の景観が変わります。既に大きなデパートは姿を消しつつあります。

・ネット販売が店舗販売を越える日が近づいています
中国アリババ主催の独身の日(11月11日)のネット販売は3兆円/日を超えています。ネットを通じての購入は多くの利便性があるため、流通業界もそれに対応しようと様々な工夫をしています。

・人の嗜好が優先される商品までもネットで販売されるようになりました
サンプルや実際の商品を見たり触ったりすることなく、好きな時間にネットで商品購入する時代です。購入だけでなく使わなくなったものを自分で値段をつけてネットオークションに出して販売する様にもなりました。しかも、それが簡単な手続きで出来る時代になりました。

・なんでもシェアリング(共有・交換)にみんな慣れてきました
ネットを使ってモノ、サービス、場所を多くの人とシェアすることに皆慣れてきました。乗り物、住居、家具、衣服、装飾品など従来は個人所有の資産を他人とシェアするようになりました。欲しいものを購入するのではなく、必要な時に借りればよい、他人と共有すればよいという考え方を持つ人が増えました。そのような人々と、所有物を提供したい人々をマッチングさせるインターネットサービスが急増しています。IT技術にも感心しますが、私は人々の価値観の変化に驚いています。個人所有の空き部屋を他人に貸し出す「Airbnb」はもうすでに世界191ヶ国、34,000以上の都市で利用できます。自家用車を利用した配車サービス「Uber」はつとに有名です。政府もこれらの動きに対して制度改革を準備しています。無駄なものを持たず、共有することでお得に使えるこのシェアリングシステムの市場規模は倍々以上に成長していくことが見込まれています。

これらはIT技術の高度な発展に支えられていますが、人々の意識、考え方の変化が極めて大きいと思います。この人々の日常の活動に根ざした社会変化を突き詰めて考えると、「リサイクル」と「シェアリング」の二つの言葉に行きつきます。これによって「資源の有効活用」「地球温暖化の歯止め」も可能になって来ます。社会のニーズと人々のニーズがうまくかみ合っています。研究開発もGDPもこの二つの言葉を大切に進めていくことです。これによって資本主義に代わる新しい世の中の仕組みが必ずや生まれてくるでしょう。それをサーキュリズム(Circulism)と呼びたいと思います。日本語では循環社会主義、循環共生主義になると思います。2025年の大阪万博でいくつものサーキュリズム関連の商品や仕組みの展示が行われることを期待しています。